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「生成AIパスポートの参考書を開いたら、1章目からニューロン、シナプス、過学習、ノーフリーランチ定理と知らない言葉が並んでいて、最初のページで手が止まった」。生成AIパスポートの学習で最初に来る壁は、ほぼこの第1章の用語です。
第1章「AI(人工知能)」は、生成AIの話が始まる前の土台にあたる章です。ここで扱うのは生成AIそのものではなく、その前の数十年で積み上がってきた機械学習とニューラルネットワークの基礎用語です。言葉の数が多いため暗記科目に見えますが、実際に出題の形を集めてみると、問われ方はごく限られた型に収まります。
この記事では、生成AIパスポート試験の第1章について、シラバスの中項目に沿って「何が問われるか」と「どの軸で選択肢を切るか」を整理します。筆者は2026年6月の回に合格し、この試験の問題集も作っています。実際に出題を組み立てるときに使っている切り口を、そのまま書いています。
この記事でわかること
- 第1章の中項目ごとに、試験でどう問われるか
- 機械学習の4つの学び方を、1つの図で見分ける方法
- ニューラルネットワーク・重み・隠れ層・ディープラーニングの関係
- 過学習と、その対策(正則化・ドロップアウト)/対策ではない転移学習の区別
- AIの3つのブームとシンギュラリティ、人名と年号の覚え方
- 第1章の形式に合わせた例題3問と解説
この記事は、生成AIパスポート試験の全範囲を章別にまとめたシリーズの第1章です。試験の概要や学習の順番は親記事にまとめています。
▶ 生成AIパスポート試験の出題範囲を章別に学ぶ|5章まとめと学習ロードマップ
第1章で問われるのは「AIという言葉の整理」
第1章は、生成AI以前のAIの歴史と仕組みを扱います。シラバスでは5つの中項目に分かれていますが、出題の中心は2つ目の「AIが知能をもたらす仕組み」に集まります。
中項目ごとの出題のされ方
シラバスの中項目と、実際に問われる形を対応させると次のようになります。
| 中項目 | 主な用語 | 問われ方 |
|---|---|---|
| AI(人工知能)の定義 | AI、ダートマス会議 | 言葉の由来を問う(年号・人名・会議名) |
| AIが知能をもたらす仕組み | ルールベース、機械学習、教師あり/なし/強化/半教師あり学習、ニューラルネットワーク、重み、過学習、正則化、ドロップアウト、転移学習 | 用語の定義を選ぶ/場面を読んで手法を選ぶ |
| AIの種類 | 特徴量、弱いAI(ANI)、強いAI(AGI) | 2つのAIの違いを問う |
| AIの歴史 | 探索、推論、エキスパートシステム、AIの冬、ビッグデータ | 技術とブームの対応を問う |
| シンギュラリティ | シンギュラリティ、ヴァーナー・ヴィンジ、レイ・カーツワイル、2045年問題、AI効果 | 人名と用語の対応を問う |
分量としては「AIが知能をもたらす仕組み」が最も多く、第1章の半分以上を占めます。ここを落とすと章ごと落とすことになるので、時間をかける価値があります。
第1章を解く軸は2つしかない
第1章の問題は、次の2つの軸のどちらかを使えば、ほとんど切れます。
軸1:正解のラベルがあるか、ないか。 機械学習の手法を選ばせる問題は、問題文に「正解を与えて」「分類を付けたうえで」とあれば教師あり学習、「正解を与えず」「自ら見つけ出す」とあれば教師なし学習、「評価を与えて」「報酬が高くなるように」とあれば強化学習です。この3語で判断がつかないときだけ、半教師あり学習(少量のラベル付きと大量のラベルなしの組み合わせ)を疑います。
軸2:学習用データに合わせすぎていないか。 過学習まわりの問題は、「学習に使ったデータでは成績がよいのに、使っていないデータでは下がる」という形が出てきたら過学習です。それを防ぐ技術か、別の目的の技術かで選択肢を切ります。
残りの中項目(定義・種類・歴史・シンギュラリティ)は、用語と人名・年号の対応を覚えるだけの暗記項目です。量は多くないので、後述の年表で一度に押さえます。
AIの定義とダートマス会議
最初の中項目は、AIという言葉そのものの意味と由来です。出題数は多くありませんが、落とすともったいない取りこぼしになります。
AIは「人間の知的なふるまいを機械で実現する技術・研究分野」
試験で問われる定義は、「人間の知的なふるまいを、コンピューターで実現しようとする技術や研究分野」です。ここで注意したいのは、AIという言葉が強いAIだけを指すわけではないことです。
選択肢には「人間と同じ意識を持ったコンピューター」「人間を超える知能を持った存在」といった、いかにもAIらしい説明が混ざってきます。これらは後述する強いAI(AGI)やシンギュラリティの説明であって、AIという言葉の定義ではありません。翻訳も、迷惑メールの振り分けも、今のAIに含まれます。
1956年・ダートマス会議・ジョン・マッカーシー
「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が研究分野の名として初めて使われたのが、1956年にアメリカで開かれたダートマス会議です。この言葉を提案したのがジョン・マッカーシーです。
この中項目で問われるパターンは3つあります。
- 「人工知能という言葉が初めて使われた出来事は?」→ ダートマス会議
- 「その言葉を提案した人物は?」→ ジョン・マッカーシー
- 「それは何年か?」→ 1956年
不正解の選択肢には、チューリングテスト(アラン・チューリングが1950年に提案した、機械が人間らしく振る舞えるかを見る試験)、IBMのワトソン、日本人工知能学会の設立などが並びます。どれもAI分野の出来事ですが、「人工知能という言葉そのものの由来」ではない、という切り方で外せます。
機械学習は「人がルールを書かない」仕組み
ここからが第1章の本体です。まず、AIに知能をもたらす2つの仕組みである、ルールベースと機械学習の対比から入ります。
ルールベースと機械学習の違いは「誰が規則を作るか」
ルールベースは、「もし〜ならば、〜する」という条件と動作の対応を、人間があらかじめ書き込んでおく方式です。書いたとおりにしか動かない代わりに、なぜその判断になったかは完全に説明できます。
機械学習は、人間が規則を書く代わりに、大量のデータから規則性をソフトウェア自身に見つけさせる方式です。データが変われば学習し直すことで判断も変わります。
この2つの対比は、第1章だけでなく、後述するエキスパートシステム(第二次AIブーム)の話にもつながります。エキスパートシステムは「専門家の知識を、もし〜ならば〜というルールの形で人が書き込んだ仕組み」なので、ルールベースの代表例です。
なお、機械学習の訓練が終わって、新しい入力に対して予測や判定を返せる状態になったものを学習済みモデルと呼びます。「大量のデータから重みの値が決まり、そのまま予測に使える状態のAI」という説明で出てきたら学習済みモデルです。
機械学習の4つの学び方を1枚で見分ける
機械学習の手法は、正解ラベルの与え方で分類されます。生成AIパスポートで問われるのは次の4つです。
図:機械学習の4つの学び方と、その下にぶら下がる代表的な手法。試験では左上の「正解ラベルがあるか」という分かれ目を読み取れれば、ほとんどの問題で選択肢を2つまで絞れます。
教師あり学習は、入力データに正解のラベルを付けて学ばせる方法です。「過去の問い合わせメールに苦情・質問・その他という分類を人が付けたうえで読ませ、新しいメールの分類を言い当てられるようにした」という場面が典型です。
教師なし学習は、正解のラベルを与えず、データの中にあるまとまりや構造そのものを見つけさせる方法です。
強化学習は、行動に対して評価(報酬)を与え、評価が高くなる行動の選び方へ改めていく方法です。「ロボットに歩行を覚えさせるため、前に進めたら高い評価を、転んだら低い評価を与えた」という場面が典型です。
半教師あり学習は、正解ラベルの付いた少量のデータと、付いていない大量のデータを組み合わせて学ばせる方法です。「大量に集めた画像のうち、人手で分類を付けられたのはごく一部」という前置きが出てきたらこれです。実務ではラベル付けが最もお金と時間のかかる作業なので、この手法が使われます。
教師なし学習の2本柱:クラスタリングと次元削減
教師なし学習の下には、生成AIパスポートで名前が問われる手法が2つあります。この2つはセットで出題されるので、違いを明確にしておきます。
クラスタリングは、正解を与えずに、特徴が近いデータを同じかたまり(クラスタ)にまとめる手法です。顧客をいくつかのグループに分ける、といった使い方です。
次元削減は、多くの項目で表されたデータを、情報をなるべく保ったまま、より少ない項目で表し直す手法です。100項目のアンケート結果を、意味のある数個の軸にまとめ直す、といった使い方です。
「グループにまとめる」のがクラスタリング、「項目の数を減らす」のが次元削減、と覚えると取り違えません。「教師なし学習に分類されるものを2つ選びなさい」という複数選択の形でも出ます。
ノーフリーランチ定理
ノーフリーランチ定理は、「あらゆる問題に対して、ほかのどの手法よりも常に優れた性能を出す万能な手法は存在しない」という考え方です。名前の由来は「ただ飯はない」という英語の言い回しです。
試験では、この定理の名前と意味の対応だけが問われます。「どんな課題にも使える最強のアルゴリズムがある」という趣旨の選択肢は、この定理の内容と逆なので誤りです。
ニューラルネットワークは脳の仕組みを借りた計算の形
ここから、ディープラーニングにつながる話に入ります。用語が多く見えますが、「脳の言葉」と「コンピューターの言葉」が1対1で対応しているだけです。
脳の言葉とコンピューターの言葉の対応表
生物の脳では、ニューロン(神経細胞)がシナプスでつながり、信号をやり取りしています。この仕組みを計算の形に置き換えたのがニューラルネットワークです。
図:左が生物の脳、右がニューラルネットワーク。ニューロンがノードに、シナプス(つながりとその強さ)が重みに対応します。試験では、この対応関係がそのまま問われます。
対応関係を表にすると次のとおりです。
| 脳の言葉 | ニューラルネットワークの言葉 | 役割 |
|---|---|---|
| ニューロン(神経細胞) | 人工ニューロン(ノード) | 受け取った値をまとめて次へ渡す最小の単位 |
| シナプス(細胞どうしのつなぎ目) | 重み(結合の強さ) | 次へ伝える信号をどれだけ強めるか弱めるかを表す数値 |
| 脳全体のネットワーク | ニューラルネットワーク | ノードを層状につなぎ、つながりの強さを学習で調整する仕組み |
ここでよく出るのが「ニューロンとノードの取り違え」です。問題文が「人間の脳を構成する神経細胞」と言っていればニューロン、「ニューラルネットワークで脳のニューロンにあたるものとして置かれた最小の単位」と言っていればノード(人工ニューロン)です。「人間の脳で、神経細胞どうしがつながって信号をやり取りする部分」はシナプスです。
重みは、学習によって調整される数値です。「ある人工ニューロンから次の人工ニューロンへ伝わる信号を、どの程度強めるか弱めるかを表し、学習によって調整される数値」という説明が出たら重みです。そして、入力ごとに異なる数値を掛けて結果への影響の強さに差をつけることを、情報の重みづけと呼びます。中古車の価格を予測するモデルで、走行距離を年式より強く結果に反映させる、といった調整がこれにあたります。
入力層・隠れ層・出力層
ニューラルネットワークのノードは、層(レイヤー)という単位でまとめられます。
図:データを受け取る入力層、結果を出す出力層、その間にある隠れ層。隠れ層を何層も重ねたものがディープラーニング(深層学習)です。層が深くなるほど、単純な形から複雑な特徴へと段階的に組み立てられます。
隠れ層は、入力層と出力層の間に置かれ、受け取った値を次の層へ渡しながら特徴を組み立てていく層です。「入力層と出力層の間に置かれ」という書き出しが出たら隠れ層です。
層を多く重ねることで得られるものは2つあります。1つは、線や角のような単純な形を組み合わせて、より複雑な特徴を表せるようになること。もう1つは、判断に使う特徴量を人が設計しなくても、学習で見つけられるようになることです。この2つは「層を多く重ねることで得られるものを2つ選びなさい」という複数選択の形でそのまま出ます。
ディープラーニングが変えたのは「特徴量を誰が決めるか」
特徴量は、判断の手がかりとしてモデルに与える、データの中の項目です。対象を見分ける手がかりになる性質を、色の濃さや大きさのように数値で表したもの、と言い換えられます。
図:上が従来の機械学習。人が「どの項目を見るか」を設計してからモデルに渡していました。下がディープラーニング。生の画像をそのまま入力し、どこを手がかりにするかを学習の中で自ら見つけます。この違いが、画像認識の精度が一気に上がった理由です。
試験では、この違いが「ディープラーニングが、それ以前の機械学習と比べて画像の判別で大きく成果を上げた理由は?」という形で問われます。答えは「判断の手がかりとなる特徴量を、データから自ら見つけ出せるようになったから」です。同じ内容が「ディープラーニング以前は人が担っていて、ディープラーニングでは学習に任せられるようになった作業は?」という聞き方でも出ます。
特徴量と重みの区別も狙われます。特徴量はモデルに与える入力の側、重みはモデルの内部で学習される数値です。入力と内部パラメータ、という線で切れば迷いません。
過学習と、その対策
第1章でもう1つ出題が集中するのが、過学習まわりです。用語が4つ(過学習・正則化・ドロップアウト・転移学習)しかないのに、組み合わせを変えて何度も出てきます。
過学習(オーバーフィッティング)は「合わせすぎ」の状態
過学習は、モデルが学習用データの細かなクセまで覚え込んでしまい、新しいデータに対する予測の精度が下がってしまう状態です。
図:横軸が学習の進み具合、縦軸が正解率。学習データでの成績(青)は上がり続けるのに、検証用データでの成績(橙)は途中から下がり始めます。この分かれ目から先が過学習の状態です。左側の、どちらも低いままの領域は未学習(アンダーフィッティング)です。
試験で「過学習が起きていると考えられる状況」として挙がるのは次の2つで、複数選択の形で出ます。
- 学習に使ったデータではほぼ正解するのに、使っていないデータでは正解率が大きく下がる
- 学習を続けると、学習データでの成績は上がるのに、検証用データでの成績は途中から下がる
反対に、学習データでも検証データでも成績が低いままの状態は未学習(アンダーフィッティング)で、過学習とは別物です。また、学習に使っていない新しいデータでも安定して精度が出せる状態は汎化性能が高い状態で、これは過学習の逆です。選択肢に紛れ込んでくるので区別しておきます。
正則化とドロップアウトは「対策」、転移学習は「別の目的」
過学習を避ける手法として問われるのは、正則化とドロップアウトの2つです。
正則化は、重みの大きさに応じた罰(ペナルティ)を損失に加えることで、極端な重みが付きにくくする手法です。一部の入力だけに過剰に反応するモデルになるのを防ぎます。
ドロップアウトは、学習のたびにノードの一部をランダムに選んで無効にする手法です。特定のノードの組み合わせに頼りきったモデルになるのを防ぎます。
一方、転移学習は、ある課題のために学習させたモデルの知識を、関連する別の課題に流用する手法です。少ないデータでも実用になる精度を目指せること、ゼロから学習させる場合に比べて学習時間と計算量を抑えられることが利点です。結果として過学習が起きにくくなる場面はありますが、過学習を防ぐこと自体を目的とした技術ではありません。
「過学習を避けるための手法を2つ選びなさい」という複数選択で、選択肢に正則化・ドロップアウト・転移学習・強化学習が並ぶ、という出題が繰り返し作れる構造になっています。転移学習を選ばせないのが作問側の狙いなので、ここは意識して分けておいてください。
AIの種類・歴史・シンギュラリティ
残る3つの中項目は、用語と人名・年号の対応を覚える暗記項目です。量は多くないので、まとめて片付けます。
ここは、筆者が実際に落としたところでもあります。2026年6月の回を受けたとき、章別の正答率で100%を切ったのは第1章だけ(87.5%)でした。第2章以降が残ったのは、業務で使っている生成AIの話と地続きだったからです。逆にAIの歴史やシンギュラリティは、仕事で使う場面がなく、正直なところ興味も持てなかったぶん、覚えたつもりで抜けていました。
分量が少ない範囲ほど「後でまとめて」と後回しにしがちですが、興味を持てない範囲は、理解して納得しようとしても残りません。用語と人名の対応だけを、カードのように短時間で何度も回すほうが確実です。この節は、そういう扱いをする前提で読んでください。
弱いAI(ANI)と強いAI(AGI)
図:左が弱いAI(ANI)。翻訳、顔の判別、音声アシスタントのように、用途を絞って作られ、決められた特定の作業だけをこなします。右が強いAI(AGI)。分野を限定せず、初めて出会う課題にも人間のように対応できるとされるAIで、現時点では実現していません。
弱いAI(ANI、Artificial Narrow Intelligence)は、特定の課題のために設計され、人間のような自意識は持たないとされるAIです。今、世の中で動いているAIはすべてこちらに分類されます。
強いAI(AGI、Artificial General Intelligence)は、特定の作業に限らず、人間のように幅広い課題を理解し柔軟にこなせるとされるAIです。汎用人工知能とも呼ばれます。
見分ける軸は「特定の課題に特化しているか、幅広い課題に対応できるか」です。問題文に具体的な用途(翻訳、顔の判別、画像認識)が書いてあれば弱いAI、「分野を限定せず」「初めて出会う課題にも」とあれば強いAIです。
AIの3つのブームを年表で押さえる
AIの歴史は、3つのブームと、その間にある2回の「AIの冬」で整理できます。
図:第一次(探索・推論)、第二次(エキスパートシステム)、第三次(ビッグデータとディープラーニング)の3つのブームと、その間の冬の時期。試験では「この技術はどのブームか」という対応がそのまま問われます。
第一次AIブーム(1950年代後半〜1960年代)の中心は探索と推論です。探索は、迷路やパズルの答えにたどり着くために、取り得る手を順に調べて道筋を見つける手法。推論は、すでに分かっている事実と決まりを組み合わせて新しい結論を導く手法です。この2語は別々に問われるので、どちらがどちらかを分けて覚えます。決められたルールの中の問題は解けても、現実の複雑な問題には歯が立たず、ブームは終わりました。
第二次AIブーム(1980年代)の中心はエキスパートシステムです。専門家の知識を「もし〜ならば〜」という条件と結論の組のルールとして人が書き込み、それをたどって結論を出す仕組みです。医療診断などで実用化されましたが、広く普及するには至りませんでした。その理由は、例外まで含めた専門家の知識を、ルールとして書き出しきれなかったからです。この「書き出しきれない」という理由は、そのまま選択肢として問われます。
AIの冬は、期待に比べて実用上の成果が伸びず、研究への予算や関心が大きく減った時期を指す言葉です。第一次ブームの後と第二次ブームの後に訪れました。
第三次AIブーム(2000年代以降)を支えたのは、インターネットや機器の普及で大量に集まるようになったビッグデータと、それを使った機械学習、そしてディープラーニングの実用化です。
シンギュラリティ・2045年問題・AI効果
最後の中項目は、人名と用語の対応です。
シンギュラリティ(技術的特異点)は、AIが人間の知能を超え、それ以降の技術や社会の変化を人間が予測できなくなるとされる転換点です。
ヴァーナー・ヴィンジは、1993年の論文でこの技術的特異点を論じ、シンギュラリティという言葉を広く知らせた人物です。SF作家でもある数学者です。
レイ・カーツワイルは、2045年ごろにシンギュラリティが訪れるという予測を示した人物です。この予測をめぐる問題が2045年問題です。
AI効果は、AIで実現できた技術が、普及して仕組みが知られると「これは単なる処理であってAIではない」と言われるようになる受け取られ方を指します。かつては最先端のAI研究だった音声の文字起こしや迷惑メールの振り分けが、今では当たり前の機能として扱われているのがその例です。
筆者は勤務先で、全社員に配られた生成AIの使い方を指導する役回りをしています。そこでよく話すのが、「昔は暗算が速いことに価値がありましたが、今は電卓があります。足が速いことにも価値がありましたが、今は車や新幹線があります」というたとえです。新しい道具は、使われ始めた頃はすごい技術として扱われ、行き渡ると道具として当たり前になります。AI効果は試験に出る用語というだけでなく、いま生成AIに起きていることの名前でもあります。
人名が2人出てくるので、「言葉を広めた=ヴィンジ(1993年の論文)」「2045年という年を出した=カーツワイル」で対応を固定しておくと取り違えません。
第1章の形式に合わせた例題3問
ここまでの内容が使える形になっているか、本番と同じ四肢択一の形で確認します。どれも実際の出題でよく使われる切り口です。
例題1:場面から学習手法を選ぶ
問題: あるコールセンターで、過去の通話記録のうち人手で「解決済み」「要折り返し」の分類を付けられたのは全体の5%だけでした。残りの95%には分類が付いていません。この両方を使ってモデルを学習させる手法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 教師あり学習
- 教師なし学習
- 半教師あり学習
- 強化学習
答え:3
正解のラベルが付いた少量のデータと、付いていない大量のデータを組み合わせて学習させるのが半教師あり学習です。教師あり学習ならすべてにラベルが必要で、教師なし学習ならラベルを一切使いません。強化学習は行動への評価をもとに学ぶ枠組みで、この場面には当てはまりません。「ごく一部にだけラベルが付いている」という前置きが、半教師あり学習の目印です。
例題2:対策か、別の目的か
問題: ニューラルネットワークの学習で、学習のたびにノードの一部をランダムに選んで無効にすることで、特定のノードの組み合わせに頼りきったモデルになるのを防ぐ手法に該当するものを1つ選びなさい。
- 転移学習
- ドロップアウト
- 次元削減
- 情報の重みづけ
答え:2
ノードをランダムに無効にする、という説明はドロップアウトのものです。転移学習は学習済みモデルを別の課題へ流用する手法で、過学習対策そのものではありません。次元削減はデータの項目数を減らす教師なし学習の手法、情報の重みづけは入力ごとに異なる数値を掛けて影響の強さに差をつけることで、どちらも別の話です。
例題3:技術とブームの対応
問題: 専門家の知識を「もし〜ならば〜」という条件と結論の組として人が書き込み、それをたどって結論を出す仕組みが実用化されたAIブームに該当するものを1つ選びなさい。
- 第一次AIブーム
- 第二次AIブーム
- 第三次AIブーム
- ダートマス会議の時期
答え:2
説明されているのはエキスパートシステムで、第二次AIブーム(1980年代)の代表的な技術です。第一次は探索と推論、第三次はビッグデータとディープラーニング。ダートマス会議(1956年)は第一次ブームの出発点にあたる出来事で、ブームの名前ではありません。
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よくある質問
Q. 第1章は生成AIの話が出てこないので、飛ばしてもよいですか?
飛ばさないほうがよいです。第2章で出てくるVAE、GAN、Transformerはすべてニューラルネットワークの応用なので、ノード・重み・隠れ層という言葉が分かっていないと、第2章の説明が丸ごと暗記になります。第1章を先に片付けたほうが、結果として全体の学習時間は短くなります。
Q. 数式は覚える必要がありますか?
ありません。生成AIパスポートは四肢択一式で、正則化の数式や損失関数の形を問う出題はありません。「正則化は重みの大きさに罰を与える手法」という日本語の説明が選べれば十分です。
Q. 教師あり学習と教師なし学習の違いは分かるのですが、場面を読む問題で迷います。
問題文の中の、データの用意のされ方だけを読んでください。「人が分類を付けたうえで」「正解のラベルを与えて」とあれば教師あり、「正解を与えず」「自ら見つけ出す」とあれば教師なし、「評価を与えて」「報酬が高くなるように」とあれば強化学習です。業務の内容(メールの分類なのか、顧客のグループ分けなのか)は手がかりにならないことがあるので、ラベルの有無だけを見るのが確実です。
Q. 人名や年号はどこまで覚えればよいですか?
第1章で名前が問われるのは、ジョン・マッカーシー(人工知能という言葉の提案者)、ヴァーナー・ヴィンジ(シンギュラリティを広めた)、レイ・カーツワイル(2045年)の3人、年号は1956年(ダートマス会議)と2045年の2つだけです。この5つを押さえれば足ります。
まとめ
- 第1章の出題は「AIが知能をもたらす仕組み」に集中する。ここを厚く、残りは暗記で片付ける
- 機械学習の手法は「正解ラベルの与え方」で見分ける。教師あり/教師なし/強化/半教師ありの4つ
- 教師なし学習の下に、グループにまとめるクラスタリングと、項目数を減らす次元削減がある
- ニューロン→ノード、シナプス→重み、という脳との対応がそのまま問われる。特徴量は入力の側、重みは内部の数値
- ディープラーニングが変えたのは「特徴量を人が設計するか、学習で見つけるか」
- 過学習の対策は正則化とドロップアウト。転移学習は別の目的の手法なので選ばない
- 歴史は第一次(探索・推論)/第二次(エキスパートシステム)/第三次(ビッグデータ・ディープラーニング)の3つと、間にある「AIの冬」
次の章では、この土台の上に立つ生成AIのモデルの系譜を扱います。VAE、GAN、Transformer、そしてChatGPTまでの流れです。
▶ 生成AIパスポート 第2章「生成AI」の要点|VAE・GAN・Transformer・ChatGPTの系譜
試験の概要や、5章全体の学習の進め方は親記事にまとめています。
▶ 生成AIパスポート試験の出題範囲を章別に学ぶ|5章まとめと学習ロードマップ
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システムエンジニア
AWSを中心としたクラウド案件に携わっています。
IoTシステムのバックエンド開発、Datadogを用いた監視開発など経験があります。
IT資格マニアでいろいろ取得しています。
AWS認定:SCS, ANS, AIP, SAP, DOP, SAA, DVA, SOA, CLF
Azure認定:AZ-104, AZ-300
ITIL Foundation
Oracle Master Bronze (DBA)
Oracle Master Silver (SQL)
Oracle Java Silver SE
■略歴
理系の大学院を卒業
IT企業に就職
AWSのシステム導入のプロジェクトを担当
